趣味日記

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感想その四「打ち砕くロッカ」

・打ち砕くロッカ

 作者:ジェームズ・リッチマン

 おすすめ度☆☆☆★★ 3

 

 最後まで読んでくれ、その一言に尽きる作品。

 序盤で判断するタイプの人にはおすすめ度☆2、最初から全部読む気になってる人には☆5でおすすめします。マジでそんくらい最後まで読んでほしい。

 

 実は私も結構序盤で一度投げ出していました。具体的には一部二章前半、ナタリーに喧嘩売った辺りですね。兎に角序盤が……後々詳しく書きますが、読むのが大変で。ただ、個人的な感想としては特に二部のお祭り感など、しっかり読み進めていけばどんどん魅力が見えてきます。

 主人公のロッカ、彼女がまた個性的です。若くして鉱山で働いていた彼女が、「魔術の特異性」という……まあ、例えが正しいかは分かりませんが、障害のようなものを理由に研究機関である魔術学園にやってくる所から物語が始まります。この子がね、等身大というか、年相応の少女で。悩んだり、挫けそうになったりしながらも、ゆっくりと学び、人との繋がりを作り、成長していく物語なのです。彼女の送る学校生活がかなり細かく描写されているので、読んでいるこっちもなんだか机に向かいたくなってくるくらい。チート的なのもほぼ無く、遊んだりしながらもゆっくりと努力し、一歩一歩着実に成果を上げていく様が魅力的です。

 なんです、が……最序盤のロッカが、最初私は好きになれませんでした。物語は彼女の一人称視点で進んでいくのですが、まーうじうじくよくようだうだしてるのなんの! 元々鉱山で働くのが大好きだった子で、親に半分無理やり入学させられたこともあって、やる気が無いだの故郷に帰りたいだのそればっか言ってます。いや、本当に最初だけですし、最後まで読んだ今ならそれも「主人公らしい主人公」の人間味のある一要素だと評価できるんですが。読み始めでそればっか言ってるんだもん……クラインの嫌みも最初はマジで只の嫌みですし、本当に最初が大変でした(個人の感想です)。

 ただ、文章はしっかりしているし、世界観も緻密な印象があったので読み進めていったところ……ナタリー戦(一部二章終盤)で盛り上がり、その後の展開でクラスメートに愛着が湧き。一部最後の戦いで「あ、これやっぱ面白いわ!」となったら二部はもう止まりません。今まで以上に、人を引っ張っていくようなロッカの魅力が前面に押し出され、広がる交友関係やドキドキする展開に引き込まれ……二部に入ってからは3日くらいかけてずっと読んでました。土日全部使いました(何やってんだ)それくらい超面白かったし三部も楽しみです。

 私は個人的に女性主人公の、正確には女性主人公視点の恋愛要素が凄く苦手なのですが(何故だかはよく分かりません)、この作品は今のところそういう要素があまり強くないのも好きでした。全く無いわけではないのがね、いいよね……この辺はもうフィーリングというか、感覚的な話ですが。

 

 さて、唯一これはすごく不満だったのですが……あ、軽いネタバレ挟みますよ。

 

 

 

 いいですかね? マジで不満なので読みたくない人も飛ばしてね?

 

 

 

 

 

 ソーニャと最初に買い物行った後、ロッカが小銭足りないってなってたシーン。あれ、「実はソーニャが内緒でくすねてた」んだと私ずっと思ってました。なんだよー、最初にできた友達が嫌な奴かよ……って思ったのも序盤を読みづらかった原因です、みんな裏があるように見えちゃって。

 いや、だって仕方なくないですか? 仲良くなったはずなのにその後丁度ソーニャの出番が減りますし。次に買い物行くときヒューゴだかがついて行こうとしたら一瞬嫌な顔するし。全部読み終わった今なら、「ソーニャはロッカ以外と元々仲良くなかった」「ソーニャは戦闘タイプの魔道士じゃなかった」からの反応・展開だって分かりますけど……アレあそこで挟む必要ありましたかね? かなりさらっと原因判明しますし、けどそれが絶妙に後の方ですし。深読みするなら、ルウナと合わせて「みんながみんな裏があるわけじゃないんだよ」って読者に語りかけるための伏線とか? 分かんないですが、初見でのあの展開はマジでちょっと……気づいたときになんだったんだあの不信感は……ってなりましたよ。

 

 

 

 ネタバレ終わり。

 

 

 

 最後に盛大な批判をしてしまいましたが、全体的には本当に読んでよかったと思える作品です。先を急がずじっくりと、もう一度読み返そうと思っています。というかもう読み返し始めましたがやっぱり文章も設定もあと伏線もすごいしっかりしてる……!

 高校や、大学の頃の青春をもう一度感じたい人。重厚な設定のファンタジーを楽しみたい人。主人公たちの地道な成長を見守りたい人におすすめします、是非読んでみてください!